ランボルギーニ最大のヒット作、ガヤルド!意外なほどコンパクトなボディとV10の強心臓を持つ新世代スーパーカー

スーパーカーの代表的ブランドのひとつ、ランボルギーニ。2010年代から2020年代に移った現在も、先鋭的なデザインと圧倒的な高性能、そして高い品質で、世界中に多くのファンが存在します。

近年のランボルギーニ躍進の転機となったのは、やはり1999年にフォルクスワーゲン・グループのアウディの傘下に入ったことが挙げられるでしょう。当初は、イタリアの代表的なブランドの良さが失われるのではないか?と不安視する声もあったものの、先進的な技術や高いクオリティといった美点を取り入れ、ランボルギーニはより魅力的なスーパーカーメーカーへと変貌を遂げたのです。

今回ご紹介するのは、アウディ傘下に入ったランボルギーニが、久々に発表した「ベイビー・ランボルギーニ」、ガヤルドについて紹介します。生産終了からしばらく経つものの、未だに中古車市場で高い人気を誇るガヤルド。その魅力に迫ります。

アウディ傘下で開発されたモデル

ランボルギーニ・ガヤルドが登場したのは2003年。当時のランボルギーニは、フラッグシップモデルの「ムルシエラゴ」以外のモデルをラインナップしていませんでした。というのも、かつて12気筒搭載モデルの下位モデルとしてラインナップしていた「ウラッコ」「シルエット」「ジャルパ」の各モデルは、どれも商業的に成功せず、しばらくの間いわゆる「ベイビー・ランボルギーニ」の系譜は途絶えていたのです。

ガヤルドは、そんな「ベイビー・ランボルギーニ」の当時の最新車種として、久しぶりにラインナップに加わったモデルです。とはいえ、搭載されているエンジンは自然吸気の5リッターV型10気筒と、ベイビーと呼ぶには勇ましすぎる強力なもの。ライバル車のひとつである、フェラーリの8気筒モデルよりも2気筒多いエンジンは、多くの新しいファンを獲得するのに一役買っていました。

参考:ランボルギーニガヤルド買取専門ページ!

ガヤルドの上位車種として先にデビューしていたムルシエラゴは、ガヤルド登場よりも2年前の2001年に販売が開始されていました。ムルシエラゴは、アウディ傘下に入った後初めて登場したモデルで、仕上げのクオリティなどは飛躍的に向上しているものの、車体の基本的な設計やエンジンは、以前からのランボルギーニの影響が強く残っています。具体的に言えば、車体は伝統的な角形鋼管フレームで組まれていたり、カウンタック〜ディアブロの流れを汲む6.2リッターV型12気筒エンジンを搭載していたりと、古き良きランボルギーニと新世代のランボルギーニを同時に体感できるモデルだったのです。

軽量かつ高剛性なアルミ製スペースフレームを採用

ムルシエラゴがランボルギーニの温故知新を味わえるモデルである一方、ガヤルドはストレートに「ランボルギーニの新世代」を感じられるモデルとなっています。ガヤルドに採用されているアルミ製スペースフレームはアウディで生産されており、搭載されている5リッターのV型10気筒エンジンも、エンジンブロックはアウディ・R8に採用されているものと共通です。

ガヤルドは、増大するパワーに対応して、4輪駆動が基本になっています。4輪駆動というと、アウディ独自の高度な制御システム「アウディ・クワトロ」が思い浮かびますが、ガヤルドに搭載されている4輪駆動システムは、それよりもずっとシンプルで単純、信頼性の高いコンベンショナルなものが採用されています。

4輪駆動の形式はシンプルなセンターデフ方式で、ビスカスカップリング式LSDを介して駆動。低重心化を念頭に、4輪駆動システム全体はエンジンとともに限界まで低く搭載されています。ミッドシップで4輪駆動、というレイアウトは、ディアブロからムルシエラゴに引き継がれたものであり、また兄弟車とでもいうべきアウディ・R8とも共通していますね。

これによって、全高はわずか1165mmと、ランボルギーニ伝統とも言える非常に低い車高を実現。全体的なスタイリングは、ディアブロ〜ムルシエラゴ系統の直線的でモダンな雰囲気をより推し進めたデザインとなっており、わずか4300mmに収まった全長と相まって、筋肉質かつ塊感を感じさせる独特のエクステリアを実現しています。

実用性を優先して通常の横開きドアを採用

デザインを担当したのは、ガンディーニやジウジアーロといったイタリア系のデザイナーではなく、ベルギー人であるルク・ドンカーヴォルケ。彼はムルシエラゴのデザインも手がけており、ランボルギーニのデザインを新しい時代へと進めた功績は非常に大きいと言えるでしょう。また、ランボルギーニは伝統的に、車種名を闘牛の名前から取ることが多かったのですが、ガヤルドの名前は、18世紀のスペインの闘牛飼育家であるフランシスコ・ガヤルドが由来となっています。こうしたところからも、ガヤルドが伝統にとらわれすぎない、新しい時代のモデルであることが伺えますね。

伝統を破る、という点では、ガヤルドには特徴的な「シザードア」が採用されていないのも大きな特徴と言えるでしょう。前部のヒンジを支点に、羽のように跳ね上がるドアはランボルギーニのデザイン上のアイコンとなっていますが、ガヤルドでは実用性を考慮してあっさりと廃止。一般的な横開きのドアとすることで、日常的な使い勝手と乗降性を向上させています。

トランスミッションは6速セミオートマチックを基本に、モデルによって6速マニュアルも用意。2003年から2013年という、近年のモデルでは比較的長いモデルスパンとなったため、様々な派生モデルや限定モデルが登場し、最後までプレミアム性や新鮮味を失わなかったのも、ガヤルドが中古車市場で今でも高い人気を誇る一因となっています。

貴重な自然吸気の大排気量エンジンを搭載

搭載されているエンジンは、先述の通り5リッターのV型10気筒エンジン。現在ではほとんど見られなくなった、大排気量の自然吸気エンジンとなっています。バンク角は低重心化を念頭に90度という比較的広く設定される一方、等間隔燃焼を行うためにクランクピンを18度オフセットする構造になっています。

ボア×ストロークは82.5mm×92.8mmと、かなりのロングストロークとなっている上、1気筒あたりの排気量は500ccが確保されているため、低回転からのトルク特性は非常に優れています。一方で、レッドゾーンは8200rpmからとかなりの高回転まで回るエンジンでもあり、自然吸気ならではの豪快なエンジンフィールは多くのファンを虜にしました。

エンジンのアップデートも長い歴史の中で何度も行われ、エンジンの排気量も2008年から5.2リッターに拡大。当初500psでスタートしたエンジンは、520ps、530ps、550ps、5.2リッター化で560psと徐々に増大し、最終的には570psと、一世代前のフラッグシップモデルのレベルにまで到達します。

魅力的な派生モデル

ガヤルドには多くの限定モデルや派生モデルが存在しましたが、特に重要なモデルは、2輪駆動モデルの「LP550-2」と、超軽量モデル「スーパーレジェーラ」の2車種でしょう。

2008年のフェイスリフトの後、2009年に250台限定で「LP550-2 ヴァレンティーノ・バルボーニ」が登場。4輪駆動だったガヤルドをあえて2輪駆動とし、エンジンは550ps、ギアボックスは6MTが標準となっています。新開発のリアアクスル用LSDを採用し、リアデフのチューニングを最適化。スタビライザー、ダンパー、コイル、タイヤ、ESPまでも改めて見直しているなど、より純粋なスポーツドライビングに焦点を当てたモデルと言えるでしょう。このモデルは非常に好評で、その好調さを受けて2010年に「LP550-2」が晴れてレギュラーモデルとしてラインナップに加わりました。

イタリア語で「超軽量」を表す「スーパーレジェーラ」は、2008年のフェイスリフトの前後で設定された、ガヤルドを代表するハイパフォーマンスモデルです。初期型のスーパーレジェーラは、車体パーツを大胆にカーボンファイバーに置き換えることで、標準モデルに比べて100kgも軽量化し1330kgまで減量。吸排気系の見直しで標準より10psアップの530psとした限定モデルでした。

フェイスリフト後の2010年に登場した「LP570-4 スーパーレジェーラ」は、初期型と同様にカーボンファイバー素材への置き換えで、標準モデルより70kg軽量化。最高出力は570psを発揮し、モデル末期とは思えないパフォーマンスを発揮しました。

10年の長きにわたって製造されたガヤルドは、最終的にランボルギーニの歴史上最多の14,022台で生産を終了。会社設立以来最大のヒットモデルとなるとともに、近年のランボルギーニ躍進の土台を築きました。現行モデルのウラカンにバトンタッチした後も、ガヤルドは中古車市場で1000万円以上の価格を維持し続けています。ガヤルドは、ランボルギーニの中でも最も親しみやすいスーパーカーとして、これからも多くの人々に愛されていくことでしょう。

[ライター/守屋健]